固定費ラボの保険の章では、生命保険・医療保険・火災保険・自動車保険と、いくつかの保険を見直す視点を紹介してきました。
ただ、これまでの記事では扱っていない保険がもうひとつあります。
それが、病気やケガで働けなくなったときの「収入の減少」に備える、就業不能保険・収入保障保険です。
この記事では、生命保険・医療保険との違いや、会社員と自営業者で異なる公的な支えの有無を整理しながら、この保険をどう捉えればいいかを考えていきます。
1. 生命保険・医療保険ではカバーしきれない「働けない間の収入」
保険の見直しの記事で整理したとおり、生命保険は主に「万が一のとき、遺された家族の生活を支える」ための保険です。
医療保険は、入院・手術のときの一時金や、治療にかかる実費の一部をカバーする保険です。
どちらも「死亡したとき」「治療を受けたとき」に給付が発生する仕組みで、働けない状態が長く続いたときの毎月の収入減そのものを補う設計にはなっていません。
入院が長引いたり、退院後も自宅療養で働けない期間が続いたりすると、この「収入の空白」が家計に直接響いてきます。
就業不能保険・収入保障保険は、この空白部分に焦点を当てた保険です。
2. 会社員には、まず「傷病手当金」という公的な支えがある
会社員・公務員など、健康保険(協会けんぽ・組合健保等)に加入している人には、病気やケガで働けなくなったときの公的な給付制度があります。
それが傷病手当金です。

業務外の病気・ケガで働けず、連続する3日間を含めて4日以上休んだ場合、4日目以降について支給の対象になります。
支給額はおおむね標準報酬日額の3分の2で、支給が始まった日から通算して1年6か月まで受け取れる制度です(協会けんぽの制度内容に基づく)。
「働けなくなったら収入がゼロになる」というわけではなく、まずこの公的な支えがある、という前提を押さえておくことが出発点になります。
3. 自営業・フリーランスは、傷病手当金の対象外という違い
一方、自営業やフリーランスが加入する国民健康保険には、傷病手当金の制度が原則としてありません。
制度上は市区町村が条例で任意に給付を設けることも可能とされていますが、実施している自治体は現時点でほとんどないのが実情です。

つまり、会社員と自営業者では「働けなくなった直後の収入を支える仕組みがあるかどうか」という前提が大きく異なります。
ただし、障害の状態が重く長期にわたる場合の障害基礎年金や、治療費側をカバーする高額療養費制度は、働き方にかかわらず利用できる公的な仕組みです。
この違いが、就業不能保険・収入保障保険をどれくらい優先して検討するかの判断材料のひとつになります。
4. 就業不能保険・収入保障保険は、どんな仕組みで収入減を補うのか
一般的に、これらの保険は「就業不能の状態が一定期間(免責期間)続いた場合に、毎月一定額を給付金として受け取れる」という仕組みで設計されています。
免責期間の長さや、給付の対象となる就業不能状態の定義は、契約する保険によって条件が異なります。
「収入保障保険」という名前の紛らわしさ
ここで注意したいのが、名前の紛らわしさです。
「収入保障保険」は、もともとは死亡保障を月払い(年金形式)で受け取る生命保険の一種を指す言葉として使われてきました。
一方「就業不能保険」は、生存中に働けなくなった場合の収入減を保障する保険で、両者は本来別物です。
保険会社によって商品性が異なる点
近年は「収入保障保険」という名称で就業不能保障に近い商品を扱う保険会社もあり、名称だけで内容を判断するのは避けたほうが安全です。
この記事では特定の保険会社名・商品名は挙げていませんが、検討する際は、パンフレットや契約概要で「何が保障の対象になるのか」を必ず確認する必要があります。
5. 加入を考える前に、確認しておきたい視点
会社員であれば、まず傷病手当金でどこまでカバーされるか(標準報酬日額の3分の2・最長1年6か月)をベースラインとして押さえ、その先の期間や、3分の2に満たない差額分をどう埋めるかを考える、という順番が整理しやすいでしょう。
自営業・フリーランスの場合は、公的な支えがない分、生活費の何か月分を貯蓄でまかなえるかという視点も、保険と合わせて検討する材料になります。

ただし、自営業者にまったく公的な保障がないわけではありません。
治療費側については、保険の見直しの記事でも紹介した高額療養費制度が働き方にかかわらず使えるため、医療費の自己負担には所得に応じた上限があります。
また、病気やケガで一定以上の障害が残るような長期・重度のケースでは、国民年金の障害基礎年金が支給対象になることもあります。
つまり「治療費は高額療養費制度で上限がある」「収入の空白(働けない間の生活費)は自力で埋める必要がある」という切り分けで考えると、自営業者が備えるべき部分がより具体的に見えてきます。
「自分の場合、働けなくなったら何か月分の生活費でしのげるだろうか」
この問いを一度考えてみるだけでも、就業不能保険・収入保障保険の必要性がイメージしやすくなります。
どの程度の保障が必要かは、家族構成や貯蓄状況によって大きく異なるため、保険の無料相談窓口の記事で紹介したような相談先も活用しながら、自分の状況に合わせて考えることをおすすめします。
6. まとめ:「働けなくなったとき」を自分の状況で考えてみる
就業不能保険・収入保障保険は、生命保険・医療保険ではカバーしきれない「働けない間の収入減」に備える保険です。
会社員には傷病手当金という公的な支えがあり、自営業者にはそれがないという前提の違いを踏まえたうえで、貯蓄でどこまで対応できるかも含めて、自分の働き方に合わせて考えてみることが大切です。


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