固定費ラボの保険の章では、保険の見直し、何から考え始めればいいかや、入りすぎ・入らなすぎ、判断の基本的な考え方を紹介してきました。
その中でも、多くの人が加入している「医療保険」については、そもそも本当に必要なのかどうか、判断に迷う人が少なくありません。
この記事では、日本の公的医療保険がカバーする範囲を踏まえたうえで、民間の医療保険がどんな人に必要で、どんな人には過剰になりがちかを整理していきます。
なお、この記事も含め固定費ラボでは、断定的な結論ではなく考え方の整理を中心にお伝えします。
1. 医療保険を考える前に、公的医療保険の範囲を確認する
日本では「国民皆保険」の仕組みにより、会社員・公務員・自営業者・フリーランスを問わず、何らかの公的医療保険に加入していることが前提になっています。

病院の窓口で支払う医療費は、多くの場合実際にかかった費用の1〜3割(年齢・所得により異なる)で済むよう設計されています。
さらに、1か月の医療費の自己負担が一定額を超えた場合、その超過分が払い戻される「高額療養費制度」という仕組みも用意されています。
民間の医療保険の要否を考える際は、まずこの公的な仕組みがどこまでをカバーしているかを知ることが出発点になります。
2. 高額療養費制度、自己負担限度額はいくらか
所得区分別の自己負担限度額(2026年8月改正後)
高額療養費制度の自己負担限度額は、2026年8月の診療分から改定されています。

70歳未満の場合、所得区分に応じて次のような月額の上限が設けられています。
| 所得区分 | 年収目安 | 自己負担限度額(月額) |
|---|---|---|
| 区分ア | 約1,160万円〜 | 270,300円+(総医療費−901,000円)×1% |
| 区分イ | 約770万〜1,160万円 | 179,100円+(総医療費−597,000円)×1% |
| 区分ウ | 約370万〜770万円 | 85,800円+(総医療費−286,000円)×1% |
| 区分エ | 〜約370万円 | 61,500円(定額) |
| 区分オ | 非課税 | 36,900円(定額) |
出典:協会けんぽ「令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」
ここで挙げた金額はあくまで目安であり、所得区分の正確な判定は、加入している健康保険から届く通知や、保険者への確認が必要です。
「多数回該当」など、さらに負担が軽くなる仕組みもある
直近12か月以内に複数回、高額療養費の支給を受けた場合は「多数回該当」として、一定回数目以降の自己負担限度額がさらに引き下げられる仕組みもあります。
また2026年8月の改正では、月ごとの上限とは別に、年間の自己負担額に上限を設ける仕組みも新設されました。
たとえば区分ウの場合、多数回該当時の自己負担限度額は44,400円、年間の自己負担上限額は53万円です。
具体的な該当回数や年間上限の金額は所得区分によって異なり、制度は今後も見直される可能性があるため、詳細は加入している健康保険組合・協会けんぽの案内や公式サイトで確認することをおすすめします。
3. 民間の医療保険は、公的保障の「先」を補うためのもの
高額療養費制度の対象外になる費用
高額療養費制度は、あくまで保険診療分の自己負担を対象にした仕組みです。
入院時の差額ベッド代(個室・少人数部屋を希望した場合の追加費用)、入院中の食事療養費の一部、先進医療の技術料など、制度の対象外になる費用もあります。
民間の医療保険は、主にこうした対象外費用や、入院・手術の際にまとまった一時金を受け取ることで、当面の出費に備える役割を担っています。
先進医療特約という選択肢
民間の医療保険の中には、「先進医療特約」という形で、技術料が高額になりやすい先進医療の費用をカバーする商品もあります。
先進医療の技術料は治療内容によって数十万円〜数百万円規模になることもあり、公的保障が及ばない領域を狙って備えたい場合に検討される特約です。
特約の保険料は比較的低めに設定されていることが多いとされていますが、実際の保障内容や対象となる治療は商品によって異なるため、加入前に契約概要で確認することが欠かせません。
4. 医療保険が必要になりやすい人・過剰になりやすい人
自分の働き方や家族構成、貯蓄状況によって、医療保険がどの程度重要になるかは大きく変わります。

必要性が高まりやすいケース
- 自営業・フリーランスで、傷病手当金のような収入減を補う公的な仕組みがない
- 貯蓄が少なく、差額ベッド代などの一時的な出費を貯蓄でまかなうのが難しい
- 扶養する家族がいて、自分が働けない期間の生活費の余裕が少ない
こうした状況に当てはまる場合は、高額療養費制度でカバーされない部分を、民間の医療保険で補う必要性が相対的に高いと考えられます。
会社員と自営業者で公的な支えがどう違うかは、就業不能保険・収入保障保険の考え方とあわせて整理すると分かりやすくなります。
過剰になりやすいケース
- 会社員・公務員で、傷病手当金など勤務先の福利厚生が手厚い
- ある程度まとまった貯蓄があり、高額療養費制度の自己負担分を自己資金で用意できる
- 扶養家族がおらず、収入が減っても生活を維持しやすい
これらに当てはまる場合、複数の医療保険に重複して加入していたり、必要以上に手厚い保障を続けていたりする可能性があります。
「なんとなく不安だから」で保障を厚くし続けていないか、一度立ち止まって確認する価値があります。
5. 判断の順序:公的保障→貯蓄→民間保険で考える
医療保険の要否は、いきなり保障内容を比較するのではなく、次の順序で考えると整理しやすくなります。
- ①公的医療保険(自己負担割合・高額療養費制度)でどこまでカバーされるかを確認する
- ②差額ベッド代や先進医療など、対象外の費用をどれくらい貯蓄でまかなえるかを考える
- ③貯蓄で不足しそうな部分を、民間の医療保険でどこまで補うかを検討する
公的保障と貯蓄の状況を先に整理してから、民間保険で補う範囲を考えるという順序を守ると、過不足のない判断がしやすくなります。
保険全体の見直しの進め方は、保険の見直し、何から考え始めればいいかの記事でも紹介しています。
6. まとめ:必要か過剰かは「貯蓄と扶養状況」で変わる
医療保険が必要かどうかは、公的医療保険でどこまでカバーされるかを知ったうえで、貯蓄で対応できる範囲を差し引いて考えることが出発点になります。
自営業・フリーランスで貯蓄に余裕が少ない人ほど必要性が高まりやすく、公的保障や貯蓄が手厚い人ほど過剰になりやすい傾向があります。
制度の内容は改定されることがあるため、判断に迷う場合は、契約している保険会社や公的な相談窓口で最新の情報を確認することをおすすめします。


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